2025.10.25
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生成AIは万能。でも“100%完成品”は求めません
生成AIを活用しないといけない気はするけれど、怖い・難しそう。——打ち合わせや懇親会などでAIに関する話題になるとそんな声をよく耳にします。
結論から言うと、AIは万能に近い働きをしますが、初回から100点の完成品を出す存在ではありません。
AIをシステムとして考えるとシステムは100%のアウトプットをだすものだという考えになり、「なんかいつも回答違うし、たまに間違えるし、AIって仕事には使えないじゃん」という結論にしてしまいます。
ここはぜひ視点を変えてもらいたいのが、AIを“人”だと思って接することです。人に何かをお願いするときには目的を伝えて、都度コミュニケーションを取りながら成果物を出してもらうと思いますが、AIに対しても同じ対応をします。それだったら人に任せても同じと思うかもしれませんが、AIは人間だったら絶対に自分のビジネスパートナーにはなってくれない世界一の処理能力をもっている「人」なのでちゃんと指示をしたら圧倒的速度と質で成果物を出してきてくれるわけです。
任せっぱなしにせず、依頼の仕方を工夫し、成果物を一緒に整えていく。この姿勢に切り替えるだけで、明日からでも現場は確実に前に進みます。
コーディングの価値がなくなる時代
生成AIの誕生であらゆるビジネスモデルが大きな変革期を迎えています。私自身、生成AIの誕生は活版印刷が生まれた時と同じくらいのインパクトがあると思っています。
もちろん、我々のSI業界でもこの流れの影響を思いっきり受けています。
一番大きいのはコーディングという作業の価値が限りなくゼロになることです。SaaSが主流になっている今でもコーディングをして一から開発をするようなスクラッチ開発は当然のようにありますし、SaaSを使っていてもコーディングをしてカスタマイズをすることもあります。
kintoneのようなノーコードサービスを使っていたとしてもプラグインや連携サービスを併せて使うことが多いかと思いますが、そのプラグインは我々のようなベンダーがコーディングをして開発しています。
コーディングは専門知識がないとできないものでしたが、まさにコーディングは生成AIが最も得意とする領域のひとつです。つまり世界有数のプログラマーを月3000円程度の費用で雇うことができる。しかも24時間365日働いてくれます。
極論、今までシステムの開発をお願いしていた部分を生成AIにお願いすることでシステムが出来上がってしまう時代になります。
では、SIビジネスはもう価値がないビジネスなのかというと今までの「人月」「ウォーターフォール」のビジネスモデルを続けていくのであれば終わる可能性は高いです。ただし、生成AIをうまく活用したビジネスモデルに変革していくことで価値提供ができるビジネスだと思っています。
SIビジネスモデルはどう変わるか
ノーコードが主流になりつつある中で弊社が提供している「システム39」のような価値で対価をいただくサービスも増えてきています。
企業がなにか会社にシステムを導入したいと思う理由は改善したい・しなければいけない業務があるからです。システムを開発するという行為自体は手段でしかないわけですので、我々SIerはより顧客の業務課題の深堀りと解決策の創出にコミットし、顧客とともに本当に必要なシステムを設計する。そして生成AIにコーディングをしてもらい、今まで以上のスピードと質でアウトプットをだす。
SIerに求められる価値は「現場理解・業務設計・データ設計・運用ルール・定着支援」によりシフトをしていく。作られたシステムを活用して業務改善が実現できた成果や定着に価値を生み出していくことが今後は今まで以上に重要になり、そこにSIerとしての価値・やりがいがでてきます。
ジョイゾー内でのAI活用
ジョイゾー内でも生成AIの活用に力を入れていっています。今までもChatGPTやCursor、Copilotといったツールを社内で試験的に使う動きはしていましたが、今期からは全社強制的にAI活用をする方針としました。
Geminiを全社共通のAIツールとして定義し、GemsやNotebookLMをどんどんと整備していっています。例えば、社内規定をすべてNotebookLMに読み込ませて就業規則や給与規定でわからないことを簡単に聞けるようにしたり、システム39やプラグインのサービス規約を読み込ませてお客さんから契約の相談が来たときにはすぐに聞けるようにしています。
サービス開発でもCursorを標準ツールとして、エンジニアは一切コードを書かずにハイスピードで高品質なプラグインやサービスを提供する仕組みを作っています。
そして、ここでとても大事なことはAIを使うことを目的としないということです。AIはジョイゾーとしてシステム39やkintoneプラグインなどを通して、社会に価値あるものを提供するための手段として活用していくという考えを持ち続けなければいけません。
生成AIは怖くない。今日から生成AIを使うために
AIは完璧な答えを一度で返す存在ではありませんが、こちらが目的を伝え、足りない点を指摘し、短い往復で整えていけば、確実に仕事を前に進めてくれる相棒になります。
怖さの正体の多くは「未知」です。
だからこそ、まずは小さく、低リスクで、「AIは人、完成は人、速度はAI」という分業を試してみてください。
具体的には、今日の30分を使って、①メールの下書き、②市場調査や売上集計のたたき、③AIを使ったネット検索など今すぐできる作業をAIに依頼してみましょう。
依頼は「目的→読み手→制約→出力形式」を箇条書きにして渡し、出力は必ず人が最終チェックをする。
その際に機密情報は入れず、出てきたアウトプットを採用するかどうかの最終判断をしてください。(これは人に頼んだとしても同じだと思います。)
この当たり前を守るだけで、初回から実務で使える“叩き台”が手に入ります。何度も言いますが、AIを使うこと自体が目的ではありません。
私たちが良い仕事を早く、安く、気持ちよく進めるための手段として、隣の席の同僚に話しかけるように、今日ここから一言目を投げかけてみてください。
気づいたら生成AIが自分にとって欠かせない相棒になっています。
